タコ産卵つぼとイカ柴~「育む」ことも漁のうち。

こんにちは! 大瀬戸町漁協です。8月が終わってもまだまだむし暑い日が続きますね。

さて8月の終わりには毎年、大瀬戸町漁協で行っている大事な業務があります。

それは、「タコの産卵つぼ投入」です! 今回は、大瀬戸町漁協で行っている資源管理のお話をご紹介します。

タコの産卵つぼは、タコたちのゆりかごです

8月27日の朝、タコ漁の漁師さん、大瀬戸町漁協職員、市の職員さんたちが集まり、タコつぼを船に積みはじめます。

つぼを積む作業
つぼを積みます

天草のつぼ屋さんから届いたタコ用つぼ、その数なんと2000個! これを5艘の船に分けて積み込みます。

船の上のつぼ
船の上

タコの産卵つぼとは、その名前と見た目の通り普通のタコつぼなのですが、普通の漁用のつぼと何か違うのがおわかりでしょうか?

そう、漁の時に使うような縄がついていません! そこのアナタ大正解!

縄がないので海に投入すると回収はできません。このつぼは、回収するものではないのです。

このつぼは、タコが思わず入りたくなるちょ~ど良い大きさのつぼで、海底でタコのおうちになります。

8月半ばあたりから9月にかけてがタコの産卵期です。この大事な時期に、このつぼのおうちでタコたちにたくさん卵を産んでもらおう、という取り組みです。

いよいよこれから出発です

大瀬戸の海で育む

このつぼ投入は、タコが減りすぎないよう、何十年も前から毎年行われています。

今年は豊漁だったタコですが、前年までの5~6年間ほど、不漁の時期が続いていました。タコの産卵つぼも、昨年投入したものは台風でなくなってしまったようです。海底の砂に埋もれてしまったのか、波で流されてしまったのか……。

海水の温暖化が進んでいるのか、タコの生息域も少しずつ変わってきています。

そこで、よりたくさんのタコに棲みついてもらうため、いろいろ試行錯誤をしています。毎年産卵つぼの一部に縄をつけ、引き上げてどれくらいタコが卵を産んでいるかの調査をしたり、水中カメラつきロボットでつぼの様子を見たりします。

今年はこんなつぼも作ってみました。

埋まりにくく改造されたつぼ
改造つぼ

これまで産卵つぼが海底で砂に埋もれてしまうことが多かったので、少しでも埋まりにくくするために少し高さをつけてみた改造つぼです! さらに、波に流されにくいように底を平にして、セメントで少し重くしています。

つぼ投入!
投入!

タコがいる海域まで来たら、一気につぼを投入します! 一か所に集中的に投入することでつぼを山状に積んで、砂に埋もれにくくするのです。

タコさんたち、ここにいい物件ありますよー!

イカも育む

大瀬戸町漁協では、タコだけでなくイカにも、産卵を助ける試みをしています。

それが毎年ゴールデンウイークごろに行われるアオリイカの「イカ柴の投入」です。

柴とは、まさに木の枝です。大瀬戸町漁協で使うのは松島の山から切り出された木です。

産卵つぼのように枝を海に投入して、イカに卵を産みつけてもらおうという試みです。こちらは柴にロープをつけておき、海に投入します。

6月の確認時期のイカ柴

イカ柴は梅雨ごろに引き上げて産卵の様子を見ます。すると、このように真っ白な卵がついているのが確認できました!

イカの卵が房状態になって柴にびっしり産み付けられています。

プルプルした感じが写真からも伝わるでしょうか。

産み付けられた直後はこのように真っ白なのですが、孵化が近づいてくると少し黒っぽくなります。

黒っぽい卵

再び海中に戻し、イカの産卵期が終わって孵化したちびイカたちが巣立っていったお盆ごろ、空っぽになった柴を回収します。

ですが、今年のお盆の回収時期、本来なら空っぽのはずの柴にまだ卵が付いていて、産卵期が少し狂っているようでした。

少しずつ海の中の環境が変わってきている中、こうした資源を育む取り組みはとても大切です。